マナビラボ

第53回

2019.07.10

次の一歩を踏み出すために

横浜市立桜丘高校 後編

「英語は道具」「中身が伝わることが重要」と語る、横浜市立桜丘高校英語科の勝倉美子先生。社会の変化を感じながら、授業づくりをされているという。長く教師を続けられ、現在は進路指導主任も務められている勝倉先生に、授業スタイルの変化や進路保障についての考え方を伺った。

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社会が変われば授業も変わる

 

——勝倉先生の授業で「自分の考えを言えること」「人の考えを聞けること」を大事にされている背景には、社会の変化があるというお話がありました。社会の変化ということに関連して、教員になられてから授業の進め方に一貫したスタイルがおありなのか、それとも社会の変化に合わせて変えている部分が大きいのか……その辺りはいかがでしょうか?

勝倉先生

 やっぱり変えていると思いますよ。基本的に、最初は自分が受けてきたようにしかできないじゃないですか。試験範囲も決まっているから、「ここまで解説し終わればいい」っていうふうに、教員にとって変なノルマみたいなものがあるんですよね。でも、研究会などで学ぶうちに、そういうやり方はやっぱり違うな、と思うようになりました。実際、そうやって教えても、子どものなかにちゃんと入って残っていくものはないんですよ。それだったら、たとえ半分しかいかなくても、自分で調べたり友達と相談したりしながら学んだ方が、子どもにとっては残るものが多いと感じています。せめてその50分間は、生徒が自分自身で勉強したっていうふうにならなきゃいけない。それが担当者の仕事だと思います。

 

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勝倉先生

 今の日本は過渡期で、一斉授業でとにかく決められた範囲を終わらせて……というところから変わっている最中ですよね。でも、今の子どもたちは教員よりも先に、新しいスタイルの授業を受けて慣れてきているということもあります。小学校や中学校ではそういう新しいやり方でやってきて、高校だけまた前を見て一言も喋らないで授業を受けるというのは、彼らの学習スタイルからしても多分無理だし効果がない。そうであるなら、彼らがこれまでに体験したなかで一番いい形の授業を考えていかなければならない、と思います。

 

一歩を踏み出すための「点」づくり

 

——ところで、勝倉先生は進路指導主任でもいらっしゃいますが、進路ということに関しては3年間でどういう力を身につけてほしいとお考えですか?

勝倉先生

 ありきたりですけど、どんな問題でも取り組んでほしいですね。チャレンジすれば力もつくし、新しい発見がありますから。それから、当たり前を当たり前と思わない、ということ。日常生活のなかの何気ない事柄であっても、それを深く研究している人がいるということを知ると、その先に進むきっかけになると思います。そうした気づきを積み重ねることで、自分のやりたいことを見つけたりとか、その先にそれを社会に還元するということにつながっていく。そういう広い視野をもって、勉強してほしいと思いますね。

 

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勝倉先生

高校卒業からその次って大きな一歩じゃないですか。卒業して、遠くの大学に行って自立したり、就職したり……。大学に入るということに限らず、そういう大きな一歩をうまく踏み出せる子に育って欲しいんですよね。ましてや、18歳って成人になるので。

大学に入ること自体が目標になっちゃうと、そこで止まってしまいます。だから、大学に入るだけじゃなくて、「大学で何をするのか」「大学で何がやりたいのか」ということが大事ですし、生徒たちにも意識してそう問いかけるようにしています。

——やりたいことを見つけられるポイントって、何かあるんでしょうか?

勝倉先生

生徒と話していると引き出せる部分も大きいですよ。いろんな話をしてその子の関心が少しずつ見えてきたら、関わりがありそうな仕事とか学問分野を紹介して、視野を広げてあげる。横文字だったりして何やっているのか分かりにくい学部とか学問分野でも、具体的な生活のなかでの例をあげながら話してあげると、反応して興味をもったりすることがあります。

そういうふうに、生徒が興味をもちそうな「点」をいっぱい置いておくことで、生徒のなかでどこかがつながって「線」になっていけばいいなと思っています。それは、英語の授業でも進路指導でも、変わらず意識しているところですね。

——本日は、本当にありがとうございました。

 

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横浜市立桜丘高等学校は、大正15年に設立された実科高等女学校の流れを汲む、公立の男女共学校。学校教育目標として、「知育・徳育・体育の調和的な伸長」を掲げる。昨年度より、ドイツ・フランクフルト市のシューレ・アム・リードと姉妹校提携を結んでいる。

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