マナビラボ

第55回

2019.10.23

堀川流「探究」のひみつを探る! 第2回

京都市立堀川高等学校

今、高校教育においてホットイシューのひとつとなっている「探究」。次期学習指導要領の実施に向けて、探究を取り入れた授業づくりに取り組まれている先生方も多いのではないでしょうか?

よりよい探究についてのヒントを探るべく、今回スタッフが伺ったのは京都市立堀川高校。20年前から探究を柱としたカリキュラムを実施している高校です。

第1回に続き、第2回は研究部長の井尻達也先生(取材当時)へのインタビューの様子をお伝えします。探究を中心とした授業づくりに長く取り組まれてきたからこそ見えてきたポイントについて、さらに踏み込んでお話を伺いました。

>>>第1回はこちら

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一番のハードルは課題設定にある——何を問い、何を問わないか

 

——学校では、人の異動などもあったりするなかで、組織的な改革を続けていくことの難しさがあると伺います。でも、堀川高校では長きにわたって、探究の取り組みが続いていますよね。

井尻先生

時間が経っても、人の入れ替わりがあっても、取り組みが盛り下がったりしてる感じはないですね。毎年、現在進行形で授業の内容を変え続けていますし。変え続けられる教科って面白いなと思ったりしています。

——毎年変え続けるというのも大変なことだと思うんですが、どういったところにコツがあるんでしょうか?

井尻先生

そりゃもう、毎年やると、やっぱりうまくいかないところとか、もうちょっと理解度をあげたり盛り上げたりしたいところとか、必ずそういう部分が出てきます。そういう部分は改善したいってなりますよね。

いま課題として認識してるのは、課題設定のところです。課題解決の方は、比較的得意なのかな。ただ、この授業の一番のハードルは、自分で問題意識を持って、自分で問題を発見して、課題を設定するっていう、スタートのところなんですね。

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井尻先生

与えられた問いに対して解決方法を考えることも今後求められていくだろうと思うんですけど、やっぱり「何を問うか」、逆に言うと「何を問わないか」っていうところが、面白いなと僕は思ってて。テレビとか新聞を見てても、「それを問うか?」ってあるじゃないですか。「そこ問題なんかな?」っていうのをちょっと置いておいて、みんなで答えだけ探しに行くみたいな。

生徒たちも、「じゃあテーマ設定しよか」ってなったら、なかなか出てこないんですよね。自分は何をしたらいいか分からないとか、先生から指示下さいとか、受け身になっちゃう。それって結構危険やなと思うので、問いを適切に設定できる素地を育てるというところには、より力を入れて取り組みたいなと思ってます。

 

探究の質をどう判断するか

 

——毎年の振り返りで、どうしても「うまくいかなかった」っていう部分が出てくるというお話ですが、探究活動が「うまくいった」「うまくいかない」というのは、どういう基準で判断されているのでしょうか?

井尻先生

僕が感覚的にとらえているポイントということでいいなら、生徒がそのテーマをほんまにやりたいんかなっていう部分は結構大事だと思っています。

生徒は、「知りたい軸」と「できる軸」の二つを持ってるんです。「知りたいけど、やり方分からない」とか「知りたいけど、できない」とかになるんですよ、最初は。そうすると、「そんなに知りたないけど、でもこうやったら分かる」っていうテーマに行っちゃったりするんです。

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井尻先生

やっているうちにだんだん面白くなってくるっていうのもあるし、いろんなパターンがあるので一概に「これは駄目」とか「これはいい」とか言いにくいんですけど……。でも、やっぱり最後のほうで、どう見ても、自分のテーマに対する愛着とか情熱がなさそうだということになると、きっと僕らの迫り方が弱くて、彼らの本当にやりたかったことを引き出せなかったなぁと。そういう意味で、あまりいい探究ではなかったと思います。言い方を変えると、しょうもない発表でもしょうもない論文でも、まぁそれはあかんのですけど、でも「あぁ、こいつ、このテーマにすごい愛情持ってるな」って感じられるなら、それはそれでよかったのかなって。

——それは大きな収穫ですよね。「知りたい軸」と「できる軸」、すごく分かりやすくて面白いです。

 

「これが堀川の学習スタイルなんだ」

 

井尻先生

堀川での探究って、探究活動を進めるためのノウハウを教える部分もあるんですけど、それよりも僕が大事に思っているのは、「学ぶってどういうことや」って生徒に迫ることなんです。高校に入学してきて、1年生の最初から始まるということもあって、数学であれ英語であれ、何だってそういう姿勢で学んでいくことが大事なんだ、これが堀川の学習スタイルなんだってことを伝えるうえでもやっています。だからこそ、探究の授業のなかだけで閉じてしまうのは少し違う。いろいろなところへの波及を見ながらやっています。

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——学校歴にもよりますけど、生徒さんたちに取っても、「小学校とか中学校の学びとは、全然違う」っていう感じになるんじゃないかと想像しますが……。

井尻先生

そうですね。おっしゃったように、テキストなども使いながら体系的に探究活動をするっていう点においては、おそらく生徒たちにとっても「堀川に来たぞ」「高校生活、始まったぞ」という感じがあると思います。高校に入って環境もガラッと変わるので、そのタイミングで学習スタイルも一気にギアチェンジする雰囲気はあります。でも、こういうスタイルが好きだっていう生徒が結構多いのかなと思うので、楽しそうにやってくれているのも見て嬉しく思っています。

——まさに、探究活動は、堀川高校での学びを特徴づける柱として位置づけられているのですね。本日はありがとうございました。

 

>>>第3回に続く

第3回・第4回では、堀川高校副校長平井啓明先生へのインタビューの様子をお伝えします。堀川高校における探究の位置づけや先生方の頑張りを支える様々なサポートなど、管理職ならではの視点からお話しいただきました。次回更新をお楽しみに!

 

IMG_3520京都市立堀川高等学校は、1943年新制高校の発足にともなって再編成された、京都市立高校のひとつ。前身は1908年設立の京都市立堀川高等女学校で、今年度で創立101周年を迎える。平成11年度より普通科・人間探究科・自然探究科の三つの学科が設置され、約20年にわたって探究学習を軸にしたカリキュラムづくりが行われてきた。

 

  • 取材

    田中 智輝

  • 取材

    村松 灯

  • 取材

    町支 大祐

  • 取材

    渡邉 優子

  • 撮影

    村松 灯

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