マナビラボ

第5回

2016.09.21

裏庭から世界へ!!

ペタンク日本代表 加藤春沖さん

ペタンクというスポーツを知っているだろうか。

日本ではそれほど知名度が高いわけではないかもしれないが、発祥の地フランスでは街角で日常的に楽しまれ、競技会には沢山の観客が集まるポピュラーなスポーツだ。

子どもから高齢者まで楽しめる生涯スポーツとしても注目されている。そんななかで近年では、日本を含めアジア各国でも人気が高まっているという。

岡山県を拠点に日本各地のペタンク競技会で活躍する加藤春沖さん(高校1年生(2016年8月24日当時))。その功績が認められて、9月末にベトナムで開催される国際大会に出場する代表選手に選ばれた。お祖父さんと裏庭ではじめたペタンクで世界に挑戦する。ペタンクの魅力や、日々の練習の様子、そして間近に迫った国際大会に向けた思いを伺った。

田中tanaka:ペタンクってどんな競技ですか?

 

img_7561加藤さん: 簡単に言うと、木製の目標球(ビュット)めがけて金属製の球(ブール)を投げ合って、相手よりも目標球に近づけることで得点を争う競技です。


tanaka田中:カーリングに近い感じがしますね。

 

img_7561加藤さん:確かにカーリングに近いかもしれませんね。

でも、カーリングは一打で攻守交代ですが、ペタンクは連続して球を投げるのでそこらへんは違いますね。ゲームには、トリプルス、ダブルス、シングルスとありますが、ベトナムでの国際大会では僕はそのどれでもなく、ティールという種目に出場します。ティールは、自分のブール をビュットやすでに置かれている他のブールをどれだけ正確に弾き飛ばせるかを競う種目です。


tanaka田中: ペタンクはどんなきっかけではじめたのですか?

 

img_7561加藤さん:小学校4年生のときに岡山県で開催された大会にお祖父さんと一緒に出たのがきっかけです。

その大会で準優勝したんです。ビギナーズラックだったんですが、それで楽しさを知って。翌年からは県外でやっている大会に行くようになりました。それからずっとやっています。


tanaka田中:いつも練習はどんな風にされているのですか?

 

img_7561加藤さん:基本的には自宅の裏庭に作った練習場を使って一人で練習します。

休みの日は朝と夕方の二回、平日は夕方だけですが、毎日やることが大切です。日を空けてしまうとやはり感覚が変わってしまいます。

 

お祖父さんが自宅の裏庭につくったお手製の練習場で日々調整をつづけているという加藤さん。実際にどんな練習をしているのだろうか。ご自宅裏の練習場を伺った。

 

img_7641

練習メニューは基本的に自分で組む。たくさん投げればいいというわけではなく、考えながら調整しつつ、感覚がつかめるまで繰り返し調整するという。この日は、特別に加藤さんから基本的なルールや投げ方を指南していただいた。

 


tanaka田中:思った以上に球が重いんですね!

 

img_7561加藤さん:そうかもしれません。

感覚がつかめればねらったところに投げられるようになりますよ。最初は、転がして目標球(ビュット)に近づけるという方が簡単かもしれませんね。


tanaka田中:たしかに、感覚がつかめてくると楽しいですね!

ちょっと自分がうまいんじゃないかと勘違いしてしまいそうです(笑)

 

img_7561加藤さん:結構簡単で、はまっちゃうんですよ。

でも、いつも同じように投げるとなると、それは本当に難しいです。一回、二回当てるのと、毎回いい投球ができるようになるのとでは全然ちがっていて。奥が深いです。


tanaka田中:一人で練習するのは大変ではないですか?

 

img_7561加藤さん:確かに自分で調整するのは難しい部分もあります。

ただ、大会でいろいろとアドバイスをもらって、それを試しながらやっています。大会はただ競うだけではなくて、アドバイスをもらう重要な機会でもあるんです。大会に行くと決まって顔見知りの方がいてアドバイスしてくれます。

img_7668

 


tanaka田中:投げ方にバリエーションがあるんですか?

 

img_7561加藤さん:ありますね。

まずは地面のコンディションによって投げ分けなければなりませんし、あとは他の球の配置に応じても変えます。先日、合宿に参加して海外から招いたコーチからは新しい投球方法を教えていただきました。

 


tanaka田中:本当にいろんな投げ方があるんですね。

 

img_7561加藤さん:はい。フランスとアジアでは大きく投球方法が違うんです。

最近ではアジアでペタンクが広がっていて、それにともなって新しい投げ方も出てきているんです。これまでぼくはフランス流の投げ方をとっていたのですが、今回アジア流の方法を教わったので。それが今までとはまったく違う投球方法だったので、練習と工夫が必要です。

160504_petanc-6

 

 

tanaka田中:合宿には高校生も何人か参加しているんですか?

 

img_7561加藤さん: いえ、高校生は僕だけです。

ジュニアの合宿も同時に開催されていたので小・中学生もいたのですが。一般の部には大学生の方が2人いらっしゃって、あとは社会人の方でした。

 

tanaka田中:そうなんですね。心細かったりはしませんか?

 

img_7561加藤さん:そんなことはないです。大会や合宿でペタンク以外の話も聞けたりして、それがとても楽しいし、ためにもなります。大学生や社会人の方とお話しする機会は貴重だなと感じます。競技者同士とはいっても本当に和やかな感じで、仲がいいんです。

 

tanaka田中:生涯スポーツとしてのペタンクならではですね。

 

img_7561加藤さん:そうですね。

ペタンクには三世代大会というのもあって、三世代で一チームを組んで対戦するんです。その大会ではないんですが、僕も父と祖父母とチームを組んで大会に出場したことがあります。年齢や男女を問わず競技に参加できるのはペタンクの特徴かもしれません。


tanaka田中:ペタンクの魅力はどんなところですか?

 

img_7561加藤さん:やっぱり一番の醍醐味は、自分のブールを相手のブールに当てて弾き飛ばす瞬間ですね。

ねらい通りに当たると気持ちがいいです。特に僕は当てることを得意としていて、今回の国際大会でも、決められた配置の球を弾き飛ばすことだけに特化したティールという種目で出場するので、その練習は重点的にしています。

160504_petanc-4

 


tanaka田中:国際大会に向けてどんな準備をされていますか?

 

img_7561加藤さん:予選を突破して、トーナメントに進みたいです。

予選突破の壁がなかなか高くて、まずはそこが勝負です。

 


tanaka田中: 海外での大会はやはり違いますか?

 

img_7561加藤さん: 会場の状況が大きく違います。

今回の大会はビーチで開催されるので、普段のコンディションとはだいぶ違います。以前出場したフランスでの国際大会では、観客が沢山詰めかけていて、その雰囲気に圧倒されました。安定した投球をするには、精神的に落ち着いていることが大切なので、今回の大会でも平常心を保つことが課題です。大会がせまっていますが、投球フォームの改善を進めつつ、精神面も整えていけたらと思います。

 


tanaka田中:ありがとうございました!

 

 

 

様々な人たちと出会い、その出会いのなかで学び、そして自分のものにしていく。ペタンクが楽しいということ、その思いが加藤さんを駆動させている。「試合が始まったら余計なことやネガティブなことは考えてはだめなんです」と自分を戒めつつも、「国際大会を楽しんできたい」と言う加藤さんの表情に気負いは感じられない。何をおいても楽しむということ、それが出会いと学び、そして熟達への近道なのかもしれない。

 

  • 取材

    田中 智輝

  • 撮影

    松尾 駿

MORE CONTENT

  • ニッポンのマナビいまの高校の授業とは!?
  • マナビをひらく!授業のひみつ
  • アクティブ・ラーナを育てる!学校づくり
  • 3分でわかる!マナビの理論
  • 15歳の未来予想図
  • 超高校生級!明日をつくるマナビの達人たち
  • どうするアクティブラーニング?先生のための相談室
  • 高校生ライターがいく
  • マナビの笑劇場