第31回
2017.09.06
「マナビラボ高校の1日」第2弾!
〜vol. 11 地歴公民科・理科の実践事例〜
全国調査の結果を解説する「ニッポンのマナビ いまの高校の授業とは!?」
2015年度に続き、東京大学大学総合教育研究センター中原淳研究室は、一般財団法人日本教育研究イノベーションセンターとの共同研究として、「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する全国調査2016」を実施しました。
各教科(国語、数学、理科、地歴・公民、外国語)の教科主任の先生向け、各教科でアクティブラーニングに取り組んでいる先生向けの2種類の調査について、調査票を送付した全国の高等学校約2,414校のうち、約74%にあたる1,794校からの回答を得ました。
調査で明らかになった各教科の実践事例をふまえて、「ハワイ」をテーマに、架空の高校「マナビラボ高校」のとある1日の授業を提案する「マナビラボ高校の1日」。(企画の説明はこちら)
今回は第2弾として、2限目・社会科、3限目・理科をお送りします!
地歴公民科や理科では、どのような参加型授業が実践されているのでしょうか!?
■ 2限目「社会」
第3次報告書では、地歴公民科の実践事例について、特に科目横断・教科横断的な観点から事例を抽出してご報告しています。
地歴公民科における科目横断・教科横断的な実践事例には、以下のような傾向が見られました。
地歴公民科では、時事問題や論争的な社会問題など複数の領域にまたがるようなトピックを教材にして、その問題に関する理解を深める授業や(1)、特定の国や地域を教材として取り上げ、その国や地域についての理解を深めたりする授業のなかで(2)地理・歴史・公民の内容を組み合わせた科目横断的な事例が多く見られました。
一方で、最もうまくいった参加型授業として教科横断的な授業を挙げてくださったのは、本調査のなかでは1事例のみでした(3)。
また、学習活動の種類としては、模擬裁判や模擬投票などのロールプレイ、知識構成ジクソー法などの協調学習のほか、ディスカッションやプレゼンテーションなど、多岐にわたる学習活動が取り入れられていることがわかりました(4)。
今回は、1限目の国語科からのつながりと、地歴公民科の事例に見られるこうした傾向、とりわけ(2)の「特定の国や地域を学習の軸に据えて、科目横断的な学習活動を展開する」という点をふまえて、カリキュラムを考えてみました。
ここで挙げたキーワードはあくまでも例にすぎませんが、キーワードの設定やグループでの調べ学習次第では、傾向(1)に見られた時事問題や論争的な社会問題の学習にもつながるかもしれませんね。
■3限目「理科」
さて、3限目は理科です。理科における参加型学習の実践事例では、以下のような傾向が見られました。
地域や生活に結びついたテーマとして、具体的には、地震をはじめとする災害に関する学習(ハザードマップの作成など)や、食品添加物に関わる実験、校区の川での生物調査などが挙げられていました(1)。
今回は、2限目の社会科とのつながりを意識したうえで、(地域や日常的な生活に直接結びついたテーマというわけではありませんが)修学旅行という実際の経験に関連させて学習テーマを設定してみました。
具体的な問いの例1については、他の教科における参加型学習の事例と共通の傾向として、論争的な社会問題の学習が導入されているという点を念頭に置いています。
また例2は、教員調査の自由記述で挙げていただいた事例をもとにして、「火山島であるハワイの」という部分だけを変更したものです。
同じ「ハワイの環境」というテーマでも、社会的な視点(2限目)と理科的な視点(3限目)の両方から考察してみることで、理解が深まるのではないかと考えてみたのですが・・・。
「こんな実践をしているよ」「こんな授業も考えられるのでは?」など、皆さまからのご意見を頂ければ幸いです!
次回は数学科と英語科の実践事例を見ていきます!お楽しみに!
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【出典記載例】
木村充, 小山田建太, 伊勢坊綾, 村松灯, 田中智輝, 山辺恵理子, 町支大祐, 渡邉優子, 中原淳 (2017). 東京大学-日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究 高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査2016: 第三次報告書. http://manabilab.nakahara-lab.net/wp/wp-content/uploads/2017/08/3rdreport.pdf
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取材
村松 灯