マナビラボ

第30回

2017.08.23

新企画「マナビラボ高校の1日」始まります!
〜vol. 10 国語科の実践事例〜

全国調査の結果を解説する「ニッポンのマナビ いまの高校の授業とは!?」

2015年度に続き、東京大学大学総合教育研究センター中原淳研究室は、一般財団法人日本教育研究イノベーションセンターとの共同研究として、「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する全国調査2016」を実施しました。
各教科(国語、数学、理科、地歴・公民、外国語)の教科主任の先生向け、各教科でアクティブラーニングに取り組んでいる先生向けの2種類の調査について、調査票を送付した全国の高等学校約2,414校のうち、約74%にあたる1,794校からの回答を得ました。

第10回目からは、全国調査2016「第3次報告書」にまとめられた調査結果の解説として、新企画「マナビラボ高校の1日」をお送りします!

 

■「マナビラボ高校の1日」とは

全国調査2016では、参加型学習に力を入れて取り組んでいる先生に、ご自身が実施した授業で最もうまくいった単元についてお聞きしました。「第3次報告書」では、このうち典型的な事例、科目横断・教科横断の観点から特徴的な事例を抽出してご紹介しています。

この各教科の実践事例に学ばせていただき、架空の高校「マナビラボ高校」のとある1日の授業を考えてみようというのが、「マナビラボ高校の1日」企画です。

マナビラボの調査担当ムラマツが、いま高校で人気の修学旅行先「ハワイ」をテーマに、教科横断的なカリキュラムを考えるという挑戦をしてみました。

というのも、アクティブラーニングを学校全体で推進していくという課題に取り組むとき、「教科横断」が大きなキーワードのひとつになりうると考えられるからです。

授業づくりに関してはまったくの初心者ムラマツ、ぜひご意見をいただければ幸いです!

 

■ 1限目「国語」

国語科の実践事例では、以下のような傾向が見られました。

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今回はこれらの傾向のうち、特に「小説を扱う単元で参加型学習が取り入れられやすいこと」「作品の表現や背景を手がかりに読解を進める場面で、参加型学習が多く実施されていること」をふまえて、学習テーマを考えてみました。

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以下で、もう少し詳しく解説していきます。

学習テーマ:「ハワイを舞台にした小説を読み、主題や登場人物の人物像・心情等の観点から、作品を読解する

教材の例:ジェシカ・カワスナ・サイキの短編「窓」(『プルメリアの日々』所収)

○「窓」のあらすじ・・・・・・ハワイの日系移民で小学校6年生の「私」は、ある日、特徴的な屋根窓のある大きな白い家が同級生マジョリーの祖父母のものであることを知る。以前からその家が気になっていた「私」は、マジョリーに「遊びに来ない?」と誘われて喜ぶ。だが、訪問に先立って、マジョリーは「私」に、祖母は「やぶにらみの子」と遊ぶのは嫌がるので、もし家で誰かに聞かれたら「私」は半分だけ日本人(=白人とのハーフ)だと説明してほしいと頼む。それは事実とは異なっていたが、「私」は「分かっているわ」と承諾する。その日の放課後、「私」はついにあこがれの家に足を踏み入れるのだが……。

問いの例:「「私」がマジョリーの祖父母の家を訪問することに関して、それぞれの登場人物はどのような思いを持っているだろう?そして、それはどのように変化しているだろうか?」「マジョリーの祖父母の家で働く人々は、なぜ「私」に家の外で会ったときと異なる印象を与えたのだろう?」

ねらい:登場人物の人間関係や発言の意味、心情等をより深く読み取っていくためには、通奏低音のように作品全体に影響を及ぼしている「ハワイ」という舞台について深く知る必要があるだろうと思います。それは、例えばハワイの歴史や文化、自然環境を含めた風土、日本との関わりといった要素であり、これらの要素についての探究は社会や理科など他教科の学習テーマとしても展開できるのではないでしょうか。その意味で、この国語の授業を、「ハワイ」についての一連の学習の出発点として1限目に設定してみました。

なお、「ねらい」に示したような国語と他の教科のつながりを含む、各教科の学習テーマ間の相互関係を示した全体像は以下の通りです。今後はこの全体像に沿って、調査から明らかになった各教科での実践の特徴をもとにした授業づくりを、詳しくお伝えしていきます。

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マナビラボの新しい挑戦、いかがでしたでしょうか。

次回は、2限目「社会」と3限目「理科」をお届けします。

社会科と理科の実践事例に見られる傾向とは・・・? ぜひお楽しみに!

 

第3次報告書はこちらから

2015年度の調査結果はこちらから

報告書に掲載されている図版や調査結果の掲載や引用をご希望される場合には、ご自由に引用・転載していただいて構いません。引用・転載にあたっては、事前にご連絡をいただく必要はありませんが、必ず以下の【出典記載例】に則って、出典をご明記ください。

【出典記載例】

木村充, 小山田建太, 伊勢坊綾, 村松灯, 田中智輝, 山辺恵理子, 町支大祐, 渡邉優子, 中原淳 (2017). 東京大学-日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究 高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査2016: 第三次報告書. http://manabilab.nakahara-lab.net/wp/wp-content/uploads/2017/08/3rdreport.pdf

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