マナビラボ

第17回

2019.05.01

宮城県松島高校観光科の「特色づくり」に迫る!(中編)

特色ある学校づくり」は、今日の学校教育について考えていくときの重要な課題の一つになっています。とはいうものの、実際の「特色ある学校」とは、どのようなものなのでしょう?また、学校における特色づくりは、具体的には教師のどのような活動によって可能になっているのでしょう?

 

こうした「特色ある学校」をめぐる問いを抱きつつ、2018年11月14日、マナビラボ・プロジェクトでは、宮城県松島高等学校観光科の授業に潜入し、観光科のカリキュラムや取り組みについて根堀り葉堀り伺ってきました。

今回は、その中編です。前編に引き続き、櫻井先生と榛澤先生にお話を伺いました。

前編はこちら→http://manabilab.nakahara-lab.net/article/5417

 

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観光科のカリキュラムづくり

――授業の中では観光について、どのように教えているのですか?

 

櫻井先生:実は教員の方も、観光が専門なのではなく商業の専門なんです。だからわれわれも、生徒と一緒につくり上げていくっていうスタイルでやっています。

日々ブラッシュアップをして、あのときは何がだめだったのかっていうのを話し合って改善していくための会を開いています。あと、授業中には(観光科の)先生方が各々教室を回っているので、気付いたことなどを即座に情報交換して、次、生徒に具体的にどんな指示をするか決めています。

授業が終わったら、教員間で方向性が合わなかったところを振り返り、擦り合わせていくようにしています。IMG_4215

 

 

 

――観光に関する科目の内容はどのようにしてデザインされたのですか?

 

桜井先生:それこそ観光学なんていうのは高校の教科にはないので、数名の教員が大学に半年間通って、観光の先生のもとで学び、教科書を作りました。

 

榛澤先生:ちょうどその教科書が完成した頃に私は赴任してきました。県外出身なのもあり、松島についても観光についても知識があまりない状況だったのですが、教科書や生徒から教わることが多かったです。

私の専門は商業の中でもビジネスマナーなんですよ。先ほどのグループの発表でもありましたが、ブレザーのボタンとか、お辞儀の仕方とか、人に対する接し方とか、厳しく教えています。多分こうるさく思われているのかもしれませんけども、こういうことは繰り返し何回か指導していけば、だんだん身に付いてくるものなので。ビジネスマナーは、社会に出てすぐ使うものですからね。ただ、授業の時間が限られていることもあり、どうしても表面的なことや部分的なことしか伝えられていないのですが。

観光に関する専門的な部分は櫻井先生に任せて、細かいところを担当している、といった感じになるのかもしれませんね。

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櫻井先生:でも榛澤先生が来てくださったおかげで、観光業にマナーの視点からどう携わるか、という新しい見方が加わったことは確かです。

商業と一つで括ってしまいますが、いろんな専門を持っている先生たちが観光科に集まって、「観光」というのを真ん中に据えて、いろんな形で関わりながら進めています。おかげですごくいろんな勉強ができるんです。

 

 

――「観光」を中心にしつつも、先生方のご専門が生かされていることがわかりました。カリキュラムを「生徒と一緒につくり上げていく」というのは、たとえば、どのようなことなのでしょう?

 

櫻井先生:先生ガイドという生徒が先生をガイドするというのがありますよ。

 

榛澤先生:県外から赴任してくる先生も多いので、これが結構詳しくて、好評なんです。

 

櫻井先生:本当に、松島の観光資源は丸ごと教材になるので、われわれも一緒に学んでいるっていうスタイルです。だんだん、そういう考えや活動が町にも受け入れられてきているように思います。

そこで発揮されるの生徒の力というのは大きいですよ。地域に高校生が入ることによって面白い化学反応が起こるんです。「高校生が言うことなんだから、協力してやっぺ」っていうふうに。生徒が地域の潤滑油になるんですよ。

 

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――生徒が地域をつなげるというのは面白いですね。生徒と地域のつながりと言えば、すでに商品化されている観光旅行プランの行程の中には「震災伝承館」が組み込まれているようですが、3.11についてはどのように扱っていますか?

 

櫻井先生:確かに、扱うのが難しい分野ですね。ただ、「伝えないといけない」っていう使命感が生徒たちにもあるんです。ガイドを依頼してくれる小中学校の中には「震災のときの話を聞かせてください」という要望もあります。

実際にガイドで震災の話をしていると、当時を思い出して泣く子もいるんですけど、でもその子たちは「自分が伝えたい、伝えなければならない」っていう使命感でやっているので、そういった覚悟みたいなものがあるんです。

観光と地方創生には似たようなところがあって、ひっくるめてその分野でもあると思うので、震災の部分も、これからを生きていくための力に変えて、ガイドをやっていますね。

 

榛澤先生:そこはやっぱり、気持ちを強く持ってって言ったら変ですけど、自分たちなりに自分たちの言葉で表現をしているんです。

 

――そうなんですね。観光科での取り組みを進めてきて、今、課題と感じていることはありますか?…つづきは、後編で。

 

 

  • 取材

    田中 智輝

  • 取材

    渡邉 優子

  • 撮影

    田中 智輝

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