マナビラボ

第5回

2017.09.27

強みをいかす学校づくり  〜4Dサイクルで考える学校の未来〜

強みをいかす学校づくり  〜4Dサイクルで考える学校の未来〜

こんにちは。この「アクティブ・ラーナーを育てる学校づくり」のコーナーでは、先日の藤井元校長のインタビューをはじめとして、【マナビの改善や変革を組織的にすすめていくことができる学校づくり】に関する情報を発信しています。

さて、今回はそんな学校づくりをどのように進めていくか、つまり、学校づくりのアプローチについてご紹介します。学校づくりのアプローチに関しては、ざっくり言うと【個人】を通じたアプローチと【組織】を通じたアプローチとがあります。【個人】を通じたアプローチとしては、例えば、リーダーシップの発揮があります。マナビラボプロジェクトとして開発を行っているケースメソッド研修は、リーダーシップを発揮できる個人の育成を狙いとするもので、個人を通じたアプローチに関連しています。今回は、もう一方、【組織】を通じたアプローチについて書きたいと思います。

4Dサイクル

「学校が機能するために、組織はどう動いたらいいか」組織を通じたアプローチとはこの問いにどう答えるか、ということになります。これに関して最もよく知られているものに、PDCAサイクルがあります。ここ10年以上、学校の組織に関わる話題には常にPDCAサイクルという考えが用いられてきました。ご存知の通り、PはPlan(計画)、DはDo(実行)、CはCheck(評価・検証)、AはAction(改善)を意味しており、この手順を繰り返すことにより継続的な改善ができるというモデルです。シンプルで分かりやすく、有用性の高いモデルです。

・・・でも、どこか「お腹いっぱい」な感じしませんか?なんでもかんでもPDCAと言われてきたので、少しマンネリを感じている方もいらっしゃるかもしれません。

そんな時に参考にしていただきたいものに、【4Dサイクル】があります。

 

4d_2

 

4Dサイクルは、ポジティブ心理学(ポジティブな思考がモチベーションとエネルギーを生む)をベースに構築されたもので、組織の「強み」をいかすためのアプローチになっています。
4Dはそれぞれ、

1.Discovery:組織が持っている強みや潜在力を明らかにする
2.Dream:組織の未来の最高の状態を思い描いてみる
3.Design:あるべき状態を明確化する
4.Destiny 行動と変化のための計画をたてる

を意味しています。
少し抽象的なので、それぞれを具体的な問いにおとしこんでみると、

1.Discovery “あなたの組織にはどんな強みがありますか?”
2.Dream “その強みや潜在力をフルにいかせるとしたら、どんなことができそうですか?”
3.Design “そのためにはどういう状態やあり方であればいいでしょうか?”
4.Destiny “その状態に至るためには、具体的にどんな風にすすめていけばいいでしょうか?”

といったようになります。上記であげた各問いは、そのままワークショップの問いにも活用できると思います。(先日の横浜研修は、これに近い形で行ってみました。)

 

4s_ws

4Dサイクルの特徴

先ほども述べましたが、4Dサイクルのベースには、「ポジティブな面について会話したり意識をフォーカスすると、ポジティブな意欲が掻き立てられる」という考え方があります。たしかに、DreamとかDestinyという言葉を見ているだけでも、ちょっとワクワクドキドキしますよね。

PDCAは、計画を実現する上での障壁や課題に目を向け、課題解決を通じて改善していくことに適しています。一方で,新たな大きなビジョンを形成する場面には4Dの方が向いているかもしれません。

 

2つの潮流_2

 

それぞれのアプローチにはメリットもデメリットもありますので、目的やタイミングに応じてアプローチを考えることが重要ではないでしょうか。一般的に言えば、日常の業務においては、どうしても課題の方に目がいきがちです。そのような日常の中では意外と見えていない、自分達の隠された強みもあるかもしれません。また、計画や予定がうまくいってるかを考えることはあっても、長期的なビジョンを語ることって、そんなにないかもしれません。

忙しい日々の中で、時には立ち止まって強みや可能性について考えてみる機会をつくると、何か違うものが見えてくるかもしれませんね。

——–

※参考:強みをいかすアプローチは、学術的には「組織開発」のなかの「AI(appreciative inquirely)」と呼ばれる分野のものです。ご興味ある方は、以下の書籍・論文も参考にしてみてください。本記事も下記を参考としています.

・組織を通じたアプローチについて:中村和彦『入門 組織開発』光文社新書2015 / ヘインバーグ(川口大輔訳)『組織開発の基本』ヒューマンバリュー2012
・学校組織の組織開発に関する解説:織田泰幸「学校の組織開発」篠原清昭編著『学校改善マネジメント』ミネルヴァ書房2012
・学校組織でのWSに関する論文:山田寛邦「学校のポジティブな組織開発が教職員に与える影響の過程の探求」日本教育工学会論文誌37(4)2014

  • 取材

    町支 大祐

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