マナビラボ

第41回

2017.12.06

やり方次第?!アイディアの量も質も変わる参加型学習

中編

東京都立高島高等学校で政治・経済の授業を担当されている大畑方人先生。「地域社会を築く」という4回シリーズの授業では、どの回でも、参加型学習が基本とされている。とはいえ、一辺倒に同じ手法が用いられているわけではない。そこには、どのような工夫あるいは躊躇があるのだろう。

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– 基本的に、グループワークを中心として授業を展開されているのですね。

大畑先生:こうした授業は、選択科目の政経だからできるのだと思います。このクラスは26人ですが、2つのクラスからそれぞれ半々くらいずつ集まっているため、もともと顔見知りということもあります。ただ、まだ全然話したことのない人と話すときには、生徒たちの間にいつもとは少し違う雰囲気が漂っているな、と感じました。とはいえ、初回の授業からペアやグループでの話し合いを中心にすすめてきて、今日の授業が20回目にあたるので、生徒たちが慣れてきているというのはあると思います。

授業は全体的にグループワークを中心としたもので、自分で考えさせることに重点を置いています。Think-Pair-Shareを意識して、授業のどこかにはそれを組み入れるようにしています。とはいえ、3年生だと特に成績を気にする生徒もいますし、また、グループワークやプレゼンテーションの内容だけで成績をつけるような評価はなかなか難しいので、テスト前になると教科書に準拠した穴埋めプリントを用意して、用語の確認をするという回も設けています。

今回の4回シリーズの授業では、最初の授業でブレイン・ストーミング、次の2時間続きの授業ではフィールドワーク、最後の授業はワールド・カフェ方式を取り入れました。参加型学習の手法については、昨今のアクティブ・ラーニングブームの中でいろいろな本に載っているので、そこから選んで用いています。実は、今日のワールド・カフェ方式は、昨日自分が参加者の一人として参加した教育に関心がある人たちの集まりで、ファシリテーターが用いていたものです。それ以前にも、参加者としてワールド・カフェ方式をやったことは何度かあったのですが、昨日ファシリテーションの様子を間近で見て、今日の授業に取り入れようと思いました。うまくいくかちょっと不安なところもあったのですが、いつも同じメンバーのグループでアイディアを出すだけでは面白くないと思っていたので。

自分が社会科の教員として授業を行っていくうえで、究極の、と言ったら大げさかもしれませんが、一番の核になっているのは、生徒たちが他者との違いを認め合って、多様性を尊重し、より民主的な社会を作っていく、その一助になりたいという思いです。それを考えると、教師がチョーク&トークの授業をして、生徒が得た知識をテストで吐き出すようなかたちでは、生徒の参加意欲は高まらないと思います。

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– 参加型学習の取り組みをやってみて、生徒たちの力がついた、と思う瞬間について聞かせてください。

大畑先生:生徒たちは、最初はほとんど話せないです。しかし、こういう授業を重ねていくにつれて、喜んで話すようになります。その瞬間っていうのは、やっぱりこうした授業を続けていくことで生徒は確実に変わるな、と思います。

あとは、今のところ、グループで意見を出してたくさん話すことを中心にしていますが、次の段階では、前に出てプレゼンができるようになってほしいです。プレゼンの機会を十分に用意することはできていないのですが、結局は、自分の考えを人の考えとぶつけ、表現し合って、伝え、聞いて、コメントをする、そういうことができるようになってほしいです。

たとえば、フィールドワークをしていても、インタビューの紙を持ちながら定型文のみを読むだけの生徒もたくさんいます。質問力とかコメント力、広く言えば、言語能力ですね。

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– フィールドワーク中に「地域社会を築く」の4回シリーズの授業は、昨年も実施したと伺いましたが、今年のこの後の授業の展開、着地点について、いろいろと思案しているようでしたね。

大畑先生:昨年は最終的に区役所の方に来ていただき、生徒たちの提案を聞いていただき、講評をしていただきました。…やっぱり、今年も、実際に区役所の方に生徒たちの提案を聞いてもらいたい、読んでもらいたい、と思い、早速メールをしました。去年も来ていただいた方なのですが、板橋区の高島平グランドデザイン担当課の方に連絡をしています。ちょうど今まさに、板橋区がパブリックコメントをやっていて、地域住民の声を集めている状況、ということもあります。

次の回からは、教育実習生の地方自治を扱った知識的な部分の確認の授業になるのですが、今日までの4回シリーズ授業は、地域社会に興味をもって考える、というトータルで十数時間つづく授業のイントロ部分になります。最終的に区役所の方に来ていただき、生徒たちには、模造紙でしっかりしたものを作って発表してもらおうと思っています。

今回、この授業の着地点について躊躇していたのは、小学生でも思いつく内容のものではなく、しっかりした内容のものを作りたい、提案のレベルを上げたい、ということがあったからです。今日のワールド・カフェ方式などを通して、アイディアの量も多く、質も高まっていたので、やり方次第で変わるのだな、と思いました。(後編に続く)

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高島高校学校写真 (1)

1973年に設置された東京都立高島高等学校。「自ら学ぶ力を育てる学校」「生徒一人ひとりの希望進路を実現する学校」「文化・スポーツ教育を通して健全な心身と人間力を育成する学校」「規範意識の醸成と社会貢献活動を通して、地域から信頼される学校」の4つを「目指す学校像」として掲げている。都立学校の中でも、部活動が盛んな学校であり、学習・進路指導にも力を入れている。

  • 取材

    渡邉 優子

  • 撮影

    田中 智輝

  • 撮影

    村松 灯

  • 撮影

    町支 大祐

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