マナビラボ

第34回

2017.10.18

全国調査の結果を解説!
〜vol. 13 2015年度から2016年度の間にALに取り組み始めた教科の特徴②〜

全国調査の結果を解説する「ニッポンのマナビ いまの高校の授業とは!?」

2015年度に続き、東京大学大学総合教育研究センター中原淳研究室は、一般財団法人日本教育研究イノベーションセンターとの共同研究として、「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する全国調査2016」を実施しました。

今回は前回に引き続き、2016年度調査の第3次報告書の内容から「2015年度から2016年度の間にアクティブラーニングに取り組むようになった教科」に着目して、どのような特徴があるのかをお伝えしていきます!

第3次報告書では、2015年も2016年もアクティブラーニングには取り組んでいないと回答した教科との比較から、その特徴を探っています。

(なお、2015年度調査では全国の高等学校3893校のうち2414校、11486名の教科主任(国語、数学、理科、地歴・公民、外国語)の先生方から、回答をいただきました。2016年度調査では、2015年度調査に回答してくださった2414校に調査票をお配りし、1794校、8680名の教科主任(同)の先生方から、回答をいただいております。)

前回は、2015年度から2016年度の間にアクティブラーニングに取り組み始めた教科の特徴について「ICTなど学習環境の整備状況」という観点から解説をしましたが、結論からいえば、学習環境の整備状況はアクティブラーニングに取り組み始めた教科とそうでない教科で大きな違いがないことが分かりました。

では、違いが出たのはどのような項目だったのでしょうか?

 

Q:アクティブラーニングに取り組むようになった教科とそうでない教科、決め手となる違いは?

違いはいくつかの変数で見られたのですが、そうした変数が特に多かったのが「教科におけるカリキュラム・マネジメント」と「学校におけるカリキュラム・マネジメント」の項目です。

まず、「教科におけるカリキュラム・マネジメント」についてです。

「教科におけるカリキュラム・マネジメント」に関わる各項目の取り組み状況について、1(取り組んでいない)から5(取り組んでいる)の選択肢から1つ選んで回答していただきました。その平均値について、この1年間でアクティブラーニングを導入しはじめた教科とそうでない教科を比較すると、導入しはじめた教科が3.67、そうでない教科が3.57となります。

つまり、アクティブラーニングに取り組むようになった教科では、そうでない教科に比べて、教科内においてこれらのカリキュラム・マネジメントがよりよくなされていることがわかったのです。

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(なお、具体的には「学校教育目標の意識」「教育課程を評価・改善する取り組み」「各教員が自分の授業を評価・改善する仕組み」「評価・改善に向けての一致協力」「校長による働きかけ」の各項目で、アクティブラーニングに取り組むようになった教科とそうでない教科の間に違いが見られました。)

 

また、ある教科がアクティブラーニングに取り組むようになるかどうかには、教科内でのカリキュラム・マネジメントの状況だけでなく、学校全体でのカリキュラム・マネジメントの状況とも関連していることがわかりました。

「学校全体でのカリキュラム・マネジメント」について、同様に分析したところ、導入しはじめた学校の平均値は3.81、そうでない学校の平均値では3.74となっています。

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(なお、アクティブラーニングに取り組むようになった教科とそうでない教科で違いが見られた「学校におけるカリキュラム・マネジメント」の具体的な項目は、「教育課程を評価・改善する取り組み」「各教員が自分の授業を評価・改善する仕組み」「評価・改善に向けての一致協力」「校長による働きかけ」でした。)

以上のことから、2015年度調査の時点ではアクティブラーニングに取り組んでいなかったけれど、2016年度調査では取り組むようになった教科には、「カリキュラム・マネジメントがよりよくなされている」という特徴があるといえます。しかも、それは、その教科内での取り組みにとどまらず、学校全体での取り組みと関連していました。したがって、アクティブラーニングの導入には、教科だけではなく学校全体でカリキュラム・マネジメントに取り組むことも同様に重要だといえそうです。
 
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2016年度調査「第3次報告書」はこちらから

2015年度の調査結果はこちらから

報告書に掲載されている図版や調査結果の掲載や引用をご希望される場合には、ご自由に引用・転載していただいて構いません。引用・転載にあたっては、事前にご連絡をいただく必要はありませんが、必ず以下の【出典記載例】に則って、出典をご明記ください。

【出典記載例】

木村充, 小山田建太, 伊勢坊綾, 村松灯, 田中智輝, 山辺恵理子, 町支大祐, 渡邉優子, 中原淳 (2017). 東京大学-日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究 高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査2016: 第三次報告書. http://manabilab.nakahara-lab.net/wp/wp-content/uploads/2017/08/3rdreport.pdf

  • 取材

    村松 灯

  • 撮影

    松尾 駿

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