マナビラボ

第19回

2019.05.22

「データにもとづくカリキュラム・マネジメント」についてご紹介します!!

データにもとづくカリキュラム・マネジメントとは

マナビラボでは、昨年度から「データにもとづくカリキュラム・マネジメント」に取り組んでいます。本日はこの取り組みについてご紹介させていただきます。

「データにもとづくカリキュラム・マネジメント」とは、データにもとづいて学校の現状を「見える化」し、その結果を囲んで行う「データ対話」を通して、「明日の学校づくり」を行なっていく取り組みです。

 

●カリマネを取り巻く状況

我々がこの取り組みを提案する背景には、次の2つのポイントがあります。

(1)カリキュラムマネジメントって何すること!?

2018年告示の学習指導要領において、カリキュラム・マネジメントは、その理念を実現するために必要な方策と位置付けられています。マナビラボの全国調査でも、組織的にカリキュラム改善を行なっているほうが、アクティブラーニングがうまくいっているという結果が出ています。多くの先生方にとってカリマネの重要性は認識されていることと思われます。

一方で、こんな声を聞くことも増えてきました。カリマネが「具体的に何をすることなのかわからない」という悩みの声です。学習指導要領等を見れば教科横断やリソース活用などのキーワードはならんでおり、その理念は理解できるものの、カリマネを行っているという具体的な「シーン」を思い描くことが難しいという状況です。

(2)学校にとって、「マネジメント」は不得意分野!?

学校にとって、「マネジメントは不得意分野」だと言われることがあります。なぜでしょうか。ひとつには、学校では日常的に予想もできないことが起こるので、将来のことを考えづらいということがあります。学校の成果も簡単に定義することはできないため、どこを目指していいのかが見えづらいところもあります。また、個々の教員ごとに「あるべき学校の姿」への思いが強く(特に高校の先生はこの思いが強いかもしれません)、まとまりづらいという状況もあります。
結果、学校が組織として何かをしようと思っても、なかなか前に進めないということがよくあります。

このような難しさをかかえながら、組織として何かに取り組もうとすると、例えば、「べき論」同士の空中戦(信念対立)に陥り、なかなか機動的に動けないという状況が生じやすくなります。また、決められないまま意見のぶつかり合いがつづけば、決めることや変えることへの「諦め」が広がることもあります。そのような雰囲気では「何も意見をしないこと」が適合的になり、結果的に「とりあえず前例踏襲」が続くことがあります。あるいは、一部の「声の大きな人」が発言力をもち、その人のもとに従わざるをえない、そんな状態に陥ることもあるかもしれません。

 

DCM図2

 

我々は、このような状況に一石を投じるものとして「データにもとづくカリキュラム・マネジメント」を提案してきました。

※参考:アクティブラーニングサミット2017 クロージング!学校づくりの未来構想 〜サミット開催報告 最終回〜  http://manabilab.nakahara-lab.net/article/4539

それでは、「データにもとづくカリキュラム・マネジメント」とはなにをすることなのか、その中身を見ていきましょう

 

●「データにもとづくカリキュラム・マネジメント」とはなにか

「データにもとづくカリキュラム・マネジメント」は、以下の4つのプロセスで進めていきます

 

データに基づくカリマネのステップ

 

(1)「調査」では、以下のものを含め、様々なデータを取得します
・生徒対象調査(授業や学校生活等)
・教師対象調査(自らの実践やマネジメント・組織風土等)
・学校の既存データ(成績等)

(2)「分析」では、上記のデータをもとにマナビラボチームが分析を行います。
・学校の課題や特色について分析し、その結果をグラフに表し、現状を「見える化」します。

(3)「データ対話」では、たくさんの教職員が参加し、ワークショップを行います。
・(2)の結果グラフを囲んで、その意味を解釈したり、そういった結果が生じる背景について対話することを通じて、学校の現状について語りあいます。

(4)「改善プランの策定」は、明日の学校づくりに向けたアクションプランづくりです

・(3)で対話した現状認識、課題認識をもとに、次年度のカリキュラムの重点や、カリキュラムの改善案について話し合います。

※これは基本のスタイルであり、それぞれの学校と十分に協議をしたうえで、ご希望の形で行います

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「データにもとづくカリキュラムマネジメント」は、これらのプロセスを通じて、「経験と勘だけ」に頼るのではなく、「根拠を持って」カリキュラムの改善に取り組むことを目指します。また、一部の人が進めるのではなく、「多くの教職員が参画しながら」、自分たちの明日への一歩を決めていくことを目指します。

 

●類似する取り組み

これまでも、類似する取り組みや似たような主張はありました。

例えば、学校評価は多くの学校で行われてきました。しかし、そういったデータは「取るだけ」になっていて、それを活かして、次のカリキュラムを改善することにつながっていないことも多いのではないでしょうか。データは、結果を眺めたり、共有するだけでは活かすことはできません。フィードバックの形や、それをもとに対話する場の、場づくりにもこだわる必要があります。

また、PDCAは、行政文書や研修等で、耳が痛いほど言われています。年度末反省会など、PDCAをまわすための取り組みも行われてはいます。しかし、実際には、前述したような「マネジメントの難しさ」が浮き彫りになり、機動的な動きが行いにくいという状況に陥りがちではないでしょうか。

マネジメントにおいて「空中戦」や「諦めの広がり」「声の大きさによる支配」が生じる根本原因は、学校の現状に関する認識のズレがあります。その背景の一つには、立ち位置の違いがあります。学校において、教科・学年・分掌など立ち位置が異なれば、また、それまで経験してきた学校の様子が異なっていたりすれば、見える姿が異なるのは当然かもしれません。加えて、成果のあいまいさもあります。何か狙いを持って実践を行なっていても、それが狙い通りにできているかどうかは、人によって見え方が異なるかもしれません。

そのような曖昧さを乗り越える鍵が、「データ」にあります。強みや課題はどこなのか、あるいは、各種の取り組みは、狙った通りに生徒たちに受け止められているか、データを囲み、そういった対話をするなかで、教職員間に現状の学校像が立ち上がってきます。多くの教職員が納得感をもって学校の明日を決めていくうえでは、この「目線合わせ」が重要です。

「データにもとづくカリキュラムマネジメント」はこれらの点にも寄与することができます。

DCM図3

 

●2018年度はいくつかの学校でこの取り組みを行ってきました

先日の、2018年度のまとめ、成果報告でもお話しした通り、昨年度はいくつかのモデル校でこの取り組みを実践いたしました。

※参考: 2018年度★成果報告 http://manabilab.nakahara-lab.net/article/5393

次回は、この事例に取り組んでみたうえでの実感やその効果等について、ラボ長中原と町支が対談します。

 

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