第33回
2017.10.04
全国調査の結果を解説!
〜vol. 13 2015年度から2016年度の間にALに取り組み始めた教科の特徴①〜
全国調査の結果を解説する「ニッポンのマナビ いまの高校の授業とは!?」
2015年度に続き、東京大学大学総合教育研究センター中原淳研究室は、一般財団法人日本教育研究イノベーションセンターとの共同研究として、「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する全国調査2016」を実施しました。
今回と次回は、2016年度調査の第3次報告書の内容から「2015年度から2016年度の間にアクティブラーニングに取り組むようになった教科」に着目して、どのような特徴があるのかをお伝えしていきます!
Q:アクティブラーニングの導入に、ICTなど学習環境の整備状況は影響を与えているの?
2015年度調査時点ではアクティブラーニングに取り組んでいなかったけれど、1年後の2016年度調査時点では取り組むようになったという教科には、いったいどのような特徴があるのでしょうか?
第3次報告書では、2015年も2016年もアクティブラーニングには取り組んでいないと回答した教科との比較から、その特徴を探っています。
(なお、2015年度調査では全国の高等学校3893校のうち2414校、11486名の教科主任(国語、数学、理科、地歴・公民、外国語)の先生方から、回答をいただきました。2016年度調査では、2015年度調査に回答してくださった2414校に調査票をお配りし、1794校、8680名の教科主任(同)の先生方から、回答をいただいております。)
今回は、2015年度から2016年度の間にアクティブラーニングに取り組むようになった教科とそうでない教科で、ICTなど学習環境の整備状況に違いはあるのかについて見ていきましょう。
アクティブラーニングのイメージとして、ICTを活用した授業を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
また、2015年度調査の結果から、アクティブラーニングを実施するうえで「施設・設備が足りない」という悩みを多くの先生が抱えていらっしゃることもわかっています。
「ICTなど学習環境の整備が足りていないから、アクティブラーニングを実施するのは難しい」と考えて、導入を見送っているという事例もあるかもしれません。
ところが・・・
分析の結果、「2015年度調査と2016年度調査の間にアクティブラーニングを導入したかどうか」と「ICTなど学習環境の整備状況」との間にはあまり関連がないことがわかりました。
例えば、2015年度調査時点での学習環境について見てみると、
・タブレット端末の台数:15.62台(導入しはじめた教科)/13.72台(そうでない教科)
・プロジェクタの台数:9.48台(導入しはじめた教科)/9.13台(そうでない教科)
・電子黒板の台数:1.68台(導入しはじめた教科)/1.97台(そうでない教科)
・グループ学習室の部屋数:1.52部屋(導入しはじめた教科)/1.58部屋(そうでない教科)
(※すべて平均値)
となっていました。
ここからは、2015年度から2016年度の間にアクティブラーニングに取り組み始めた教科とそうでない教科の間に学習環境の整備状況に大きな差はなく、むしろ、取り組み始めた教科よりもそうでない教科の方が整備されているものもある(ここでは、電子黒板とグループ学習室)ことがわかります。
2015年度時点でのICTなど学習環境の整備状況は、その後の1年間でアクティブラーニングに取り組みようになるかどうかには影響を与えておらず、学習環境が整備されているからといってアクティブラーニングに取り組むようになるというわけではないといえそうです。
今回は、2015年度から2016年度の間にアクティブラーニングに取り組み始めた教科の特徴について「ICTなど学習環境の整備状況」という観点から解説をしてきましたが、結論からいえば、学習環境の整備状況はアクティブラーニングに取り組み始めた教科とそうでない教科で大きな違いがないことが分かりました。
では、導入しはじめた教科とそうではない教科では、何が違ったのでしょうか?
次回はこの点について解説していきます!お楽しみに!
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【出典記載例】
木村充, 小山田建太, 伊勢坊綾, 村松灯, 田中智輝, 山辺恵理子, 町支大祐, 渡邉優子, 中原淳 (2017). 東京大学-日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究 高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査2016: 第三次報告書. http://manabilab.nakahara-lab.net/wp/wp-content/uploads/2017/08/3rdreport.pdf