第27回
2017.05.17
全国調査の結果を解説!
〜vol.8 学校タイプ別実施率と教科主任の働きかけ〜
全国調査の結果を解説する「ニッポンのマナビ いまの高校の授業とは!?」
2015年度に続き、東京大学大学総合教育研究センター中原淳研究室は、一般財団法人日本教育研究イノベーションセンターとの共同研究として、「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する全国調査2016」を実施しました。
各教科(国語、数学、理科、地歴・公民、外国語)の教科主任の先生向け、各教科でアクティブラーニングに取り組んでいる先生向けの2種類の調査について、調査票を送付した全国の高等学校約2,414校のうち、約74%にあたる1,794校からの回答を得ました。
全国調査2016の結果解説、8回目となる今回は「参加型授業の進路タイプ別実施率と進路タイプ別の教科主任の働きかけ」についてです。
【参加型授業の進路タイプ別実施率】
マナビラボでは、進路先によって学校を以下の4つのタイプに分類しました。
難関進学校:四年制大学への進学率が高く、進学準備の割合も高い学校
中堅進学校:四年制大学への進学率が高い学校
中堅校:四年制大学への進学率も高いが、専修・各種学校への進学率も高い学校
進路多様校:専修・各種学校への進学率や就職の割合が高い学校
学校タイプ別に参加型授業の実施率を見てみると、難関進学校で50.9%、中堅進学校で49.6%、中堅校で44.0%、進路多様校で48.8%となっており、中堅校での実施率がやや低くなっていました。
その一方で、この結果からは進路多様校での実施率は決して低くないこともわかります。
ただし、学校ごとに参加型授業を実施するねらいや、期待する効果は異なるかもしれません。今後の課題として、実施率だけでなく、参加型授業に求めるものや効果の実感に関する学校タイプごとの特徴についても、明らかにしていければと思います。
【教科主任の管理職への働きかけ】
進路タイプ別に学校での教科主任の先生方が管理職の先生方に対してどのような働きかけをされているかを調べたところ、「AL方針の明確化」「ALへの動機づけ」「教科でチーム作り」「ALの質の点検」「学習機会の支援」「役職を超えた教師間コミュニケーション」の5つの働きかけに分類することができました。
5つの中でも、「AL方針の明確化」「ALの質の点検」「学習機会の支援」はすべての進路タイプで低い値になっており、働きかけが少ないことがわかりました。
また、進路タイプ別に見ると、中堅校の働きかけが全体として他のタイプの学校より少ないという結果になりました。「進路タイプ別実施率」の結果も合わせて考えると、教科主任の先生方の働きかけと参加型授業の実施率の間に関連があるといえそうです。
参加型授業の効果を高めていくためには、教科主任の先生方の役割が鍵になってきそうですね。
上図は、ご自由に引用・転載していただいて構いません。また、引用・転載にあたっては、事前にご連絡をいただく必要はありませんが、必ず以下の【出典記載例】に則って、出典をご明記ください。
【出典記載例】
木村充, 伊勢坊綾, 小山田建太, 田中智輝, 村松灯, 山辺恵理子, 中原淳 (2017). 東京大学-日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究 高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査2016: 第一次報告書.
http://manabilab.nakahara-lab.net/wp/wp-content/uploads/2017/01/1streport.pdf