マナビラボ

第25回

2017.05.03

全国調査の結果を解説!
〜Vol.6 教科別に見た組織的取り組みと効果の実感〜

全国調査の結果を解説する「ニッポンのマナビ いまの高校の授業とは!?」

2015年度に続き、東京大学大学総合教育研究センター中原淳研究室は、一般財団法人日本教育研究イノベーションセンターとの共同研究として、「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する全国調査2016」を実施しました。
各教科(国語、数学、理科、地歴・公民、外国語)の教科主任の先生向け、各教科でアクティブラーニングに取り組んでいる先生向けの2種類の調査について、調査票を送付した全国の高等学校約2,414校のうち、約74%にあたる1,794校からの回答を得ました。

全国調査2016の結果解説、6回目となる今回は「教科別に見た組織的取り組みと効果の実感」についてです。

 

組織的な取り組みの状況(教科別)


infographics_20170501-02

「教科として組織的に参加型学習に取組んでいる」のは、国語科15.4%、地歴・公民科11.3%、数学科10.5%、理科13.2%、外国語科24.2%で、外国語科が他の教科の取り組み状況に比べると多くなっていました

しかし、全体の取り組み状況としては「教科として組織的に取組んでいるわけではないが、独自に参加型学習に取組んでいる教員がいる」の割合が圧倒的であり(国語科76.3%、地歴・公民科74.4%、数学科65.3%、理科70.9%、外国語科66.4%)、「参加型学習に取組んでいる教員はまったくいない」も8.4%〜24.2%となっています。

先生方一人一人の負担を減らし、アクティブラーニングを効果的な形で根づかせていくためには、教科全体ひいては学校全体での組織的な取り組みが鍵となりますが、この点に関してはいまだ挑戦的な課題がありそうです。

 

最もうまくいったと思われる単元での効果の実感(教科別)
infographics_20170501-03

 

最もうまくいったと思われる単元の教育効果について教科主任の先生方に尋ねたところ、先生方が実感している効果は、大きく「思考・表現力」「課題解決力」「教科基礎力」「教科応用力」「協働性」「主体性」「市民性」「入試・就職力」の8つに分類することができました。

インフォグラフィックでは、このうち教科による違いが小さかった「入試・就職力」を除いた7分類の効果について、どの程度実感されているのかを教科別に示しています。

とはいえ、「入試・就職力」以外の7分類の効果についても、教科による違いは決して大きくありませんでした。

際立っていたのは、どの教科においても「市民性」に関する効果の実感がきわめて低いということです。

こうした傾向は、最もうまくいったと思われる単元に限らず教科全体の傾向や、学校全体の傾向、さらには2015年度の調査結果においても、共通して見られるものです。

しかし一方で、「市民性」をねらいとした授業では、参加型授業の効果が実感される割合が全体として他より高くなるという結果も出ています。

これからのアクティブラーニングを考えるにあたっては、社会や生徒自身の生き方とのつながりを視野に入れることが、より重要になってくるものといえそうです。

 

上図は、ご自由に引用・転載していただいて構いません。また、引用・転載にあたっては、事前にご連絡をいただく必要はありませんが、必ず以下の【出典記載例】に則って、出典をご明記ください。

【出典記載例】
木村充, 伊勢坊綾, 小山田建太, 田中智輝, 村松灯, 山辺恵理子, 中原淳 (2017). 東京大学-日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究 高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査2016: 第一次報告書.
http://manabilab.nakahara-lab.net/wp/wp-content/uploads/2017/01/1streport.pdf

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