マナビラボ

第21回

2017.03.01

全国調査の結果を解説!
〜Vol.4 教科における組織文化と効果の実感〜

全国調査の結果を解説する「ニッポンのマナビ いまの高校の授業とは!?」

2015年度に続き、東京大学大学総合教育研究センター中原淳研究室は、一般財団法人日本教育研究イノベーションセンターとの共同研究として、「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する全国調査2016」を実施しました。
各教科(国語、数学、理科、地歴・公民、外国語)の教科主任の先生向け、各教科でアクティブラーニングに取り組んでいる先生向けの2種類の調査について、調査票を送付した全国の高等学校約2,414校のうち、約74%にあたる1,794校からの回答を得ました。

全国調査2016の結果解説、4回目となる今回は「教科における組織文化と効果の実感」についてです。

教科における組織文化
教科における組織文化

本調査では、教科における組織文化について、各教科の教員間で共有されている行動・思考様式がどのようなものか、先行研究の項目を参考に尋ねました。

その結果、教科における組織文化は、大きく次の3つに分けられることがわかりました。

  • 教師自身の成長意欲:
    • 各教員が自発的に自らの力量を高めようとしているか、専門家としての高い使命感を持っているか、新しい実践を作り出すための挑戦や変化を好んでいるか など
  • 自律的な仕事環境:
    • 教材研究のための時間が確保されているか、授業実践の工夫を自由に試みることができるか、教育活動に関する管理職からの関与は少ないか など
  • 教師間の支え合い:
    • 悩み事を同僚同士で相談し合っているか、教材研究や単元開発において同僚同士で支援し合っているか など

全国の高校を平均すると、「教師自身の成長意欲」「教師間の支え合い」といった組織文化があるものの、「自律的な仕事環境」についてはあるとはいいがたい状況であることがわかりました。

組織文化が効果の変化に及ぼす影響
組織文化が効果の変化に及ぼす影響

組織文化とALの効果との関係を見ると、上に挙げたような組織文化のある教科の方が、ない教科と比べると、やや効果の変化を実感していることがわかりました。
特に、「教師自身の成長意欲」のある教科では、より効果について変化を実感していることが読み取れます。
教科において生徒たちが学び・成長する効果的なALを実施するためには、まずは先生たちが学び・成長することが重要であると言えそうです。

 

 

上図は、ご自由に引用・転載していただいて構いません。また、引用・転載にあたっては、事前にご連絡をいただく必要はありませんが、必ず以下の【出典記載例】に則って、出典をご明記ください。

【出典記載例】
木村充, 伊勢坊綾, 小山田建太, 田中智輝, 村松灯, 山辺恵理子, 中原淳 (2017). 東京大学-日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究 高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査2016: 第一次報告書.
http://manabilab.nakahara-lab.net/wp/wp-content/uploads/2017/01/1streport.pdf

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