マナビラボ

第20回

2017.02.15

全国調査の結果を解説!
〜Vol.3 アクティブラーニング推進に向けた教科主任の取り組み〜

全国調査の結果を解説する「ニッポンのマナビ いまの高校の授業とは!?」

2015年度に続き、東京大学大学総合教育研究センター中原淳研究室は、一般財団法人日本教育研究イノベーションセンターとの共同研究として、「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する全国調査2016」を実施しました。
各教科(国語、数学、理科、地歴・公民、外国語)の教科主任の先生向け、各教科でアクティブラーニングに取り組んでいる先生向けの2種類の調査について、調査票を送付した全国の高等学校約2,414校のうち、約74%にあたる1,794校からの回答を得ました。

全国調査2016の結果解説、3回目となる今回は「アクティブラーング推進に向けた教科主任の取り組み」についてです。

教科主任としての働きかけ
教科主任としての働きかけ

本調査では、アクティブラーニングの推進に向けて、教科主任の先生がどのようなことに取り組んできたかを尋ねました。

まず、教科内の教員に対する働きかけについてです。教科主任の働きかけは、大きく次の6つに分けられることがわかりました。

  • ・AL方針の明確化:数値目標の設定、メンバーの役割・責任の明確化 など
  • ・ALへの動機づけ:会話中での意識化、新しい試みの奨励、モデルの提示 など
  • ・教科でのチームづくり:チームワークへの配慮、情報共有の機会づくり、議論の機会づくり など
  • ・ALの質の点検:校内巡視とフィードバック、計画・評価の指導、施設・設備の整備 など
  • ・学習機会の支援:教員の自学環境の整備、校内研修の企画、AL実施教員の賞賛 など
  • ・役職を越えた教師間コミュニケーション:管理職との意思疎通、管理職と教員の関係強化 など

それぞれの働きかけの実施度は、「教科でのチームづくり」「ALへの動機づけ」「役職を越えた教師間コミュニケーション」の取り組みはやや取り組まれているものの、「学習機会の支援」「ALの質の点検」「AL方針の明確化」の取り組みはあまり取り組まれていないことがわかりました。

教科主任としての働きかけと効果

それぞれの働きかけとALの効果との関係を見ると、働きかけの実施度の高い教科ほど効果の変化を実感していることがわかりました。
特に、「ALへの動機づけ」「学習機会の支援」による効果が高くなっていました。
教科において効果的なALを実施するためには、各教員のALへの意識を高めるとともに、AL実施に向けて教員の学習環境を整えることが重要であると言えそうです。

教科主任の管理職への働きかけ
教科主任の管理職への働きかけ

次に、教科主任による管理職への働きかけについて尋ねました。その結果、教科主任の管理職への働きかけは、大きく次の7つに分けられることがわかりました。

  • ・教師の仕事スリム化の促進:補助教員・実験助手の整備、教員の事務作業の軽減 など
  • ・ALへの組織的取組の促進:研修会や勉強会での取り扱い、組織的な方針の打ち出し など
  • ・指導に関する参考資料収集の促進:関連資料(書籍・雑誌・ビデオ・DVDなど)の購入 など
  • ・校内での教師間連携の促進:同僚との交流促進、同僚から助言が得られる仕組みづくり など
  • ・学校のビジョン共有:学校運営方針の明示、意欲的な実践の評価 など
  • ・校外での学習の促進:研修会や勉強会への参加奨励、他校教員との交流促進 など
  • ・校外リソース獲得の促進:大学や企業との連携、PTAや自治体との連携、補助金や助成金の獲得 など

いずれの管理職への働きかけも、全国平均としてはあまり取り組まれていないことがわかりました。

20160110

それぞれの管理職への働きかけとALの効果との関係を見ると、管理職への働きかけの実施度の高い教科ほど効果の変化を実感していることがわかりました。
特に、「ALへの組織的取り組みの促進」「校外リソース獲得の促進」による効果が高くなっていました。
管理職への働きかけは全体として弱い傾向にありますが、管理職に積極的に働きかけている上位20%の教科では、前年からの効果の変化量が顕著に大きくなっています。AL推進に向けて組織的に取り組めるよう、管理職を巻き込んでいくことが重要であると言えそうです。

 

上図は、ご自由に引用・転載していただいて構いません。また、引用・転載にあたっては、事前にご連絡をいただく必要はありませんが、必ず以下の【出典記載例】に則って、出典をご明記ください。

【出典記載例】
木村充, 伊勢坊綾, 小山田建太, 田中智輝, 村松灯, 山辺恵理子, 中原淳 (2017). 東京大学-日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究 高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査2016: 第一次報告書.
http://manabilab.nakahara-lab.net/wp/wp-content/uploads/2017/01/1streport.pdf

MORE CONTENT

  • ニッポンのマナビいまの高校の授業とは!?
  • マナビをひらく!授業のひみつ
  • アクティブ・ラーナを育てる!学校づくり
  • 3分でわかる!マナビの理論
  • 15歳の未来予想図
  • 超高校生級!明日をつくるマナビの達人たち
  • どうするアクティブラーニング?先生のための相談室
  • 高校生ライターがいく
  • マナビの笑劇場