マナビラボ

第19回

2016.12.14

学校がもっと表現に寛容だったら
芸人はもっと少なくなる?!
お笑い×インプロ(即興)×教育

かもめんたる x 中原淳 x モクレン(Part3)

ラボ長の中原が、教育に熱意のある著名人の方をお招きして「これからの社会」や「これからの教育」についてざっくばらんに語り合う、「15歳の未来予想図」。

お笑いコンビのかもめんたるのお二人をゲストにお迎えしての鼎談企画、今回はPart3です。
引き続き「マナビの笑劇場」でお馴染みのモクレンのお二人にも、ご参加いただいています。

NHK講座「国語表現」に出演するなど、教育にお笑いをプラスする活動をしているほか、
お笑いを学びたい一般のひとに向けた講座も持ち、様々な手法を模索しながら教えているかもめんたるのお二人。
 
今回のトークのお題は「今までに教わった先生の中で、特に印象の深い先生」
岩崎う大さんの印象の深い先生は「殺傷能力の高い一言」を放った習字の先生?!
槙尾ユウスケさんが思い出したのは、まさかの「怖い話」……?!

 

※「かもめんたる」
…岩崎う大さんと槙尾ユウスケさんのお笑いコンビ
…キングオプコント2013優勝
  先月放送されたキングオブコント2016でも決勝に進出
…公式サイト:http://kamomental.com
…youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/kamomental

 

>>Part4は来週公開予定!

 

 

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中原: 「お笑い」って聞くとさ。
最初からステージにいるようなイメージがあって、まあ矢島さんはそうだったんだけど、皆さんは割と地味にこう…(笑)

岩崎: やっぱり、スプリングをじーっとこう……
ぐーってなって(押されていて)、その反動で「出たい」ってなるんですよね。

中原: そういう人って多い?

槙尾: 多いと思います。二つに分かれるといいますか。
学生時代、高校時代からばーっとみんなの前でやって、大爆笑とってる人気者タイプか、そうじゃなくてずーっと……

中原: 「スプリング系」?

槙尾: 「スプリング系」と

岩崎: うん。
でも、その若いうちからやってる人も、多分もっと早い段階にスプリングがこうなってる(押されている)人が多いような気はするんですよね。

中原: そうか、そういうもんなんだね。

槙尾: そうだと思います。

岩崎: そうでもなんないと、こういう仕事、あんまりやらないような気がしますね。

中原: そう(笑)

矢島: 学校って、ちょっと表現するのがおっくうになる空間だったりしませんか?

野村・矢島:ああ。

矢島: だから「表現したい」とか「何かやりたい」とは思うけど、周りの目も気になるし。
多感な時期っていうか。
それがあるときに、社会人になるとか、あるいは大学行ったときに、多分、そのスプリングが「びゅ!」って跳ねる瞬間がある。
もし学校がもっと表現に寛容な場所だったら、お笑い芸人はもしかしたらもっと少なかったかもしれないですよ

中原: じゃあ、学校はこれでいいんだ(笑)

槙尾・野村: (笑)

矢島: 逆にね。

槙尾: 学園祭とか文化祭のときはその分、「何か表現したい」って気持ちが「バッ」て広がったような気がします。
そういうチャンスがあれば表現してましたけど。

中原: じゃあ、今スプリングで鬱屈としてても大丈夫よ、と

岩崎: そうです。

槙尾: 全部「振り」になるよね。

中原: (笑)
ちょっと、じゃあ質問を変えて。
これ現場の先生も結構見てるコーナーなんですけど、「今までに教わった先生の中で、特に印象の深い先生」。
ネガでもポジでもいいけれども。どうですか?

岩崎: それは小学校とかでもいいですか?

中原: いいですよ。

岩崎: 僕は、1個覚えてるのが、2年生のときかな。
小学校のときにある先生が「なんでみんな学校に来てるか分かるか?」みたいなことをいきなり言い始めて。
相当難しい質問だったんです。「なんで?」って言われても。
「行かないとお母さんに怒られるから」とかいろいろ答えたんです。
でも、「違う」って言う。
「別に勉強するんだったら、家でもできるだろう」とか。
それで、先生が最後に言ったのが「友達をつくるためだ」みたいなことで。
みんなそのときにちょっといいこと過ぎて照れくさいみたいな感じも漂わせつつも、「そうなんだ」みたいな。
「楽しいんじゃん、学校」、みたいな。
そんな感じでみんなそれぞれ思ってたんですけど。

そのあと、クラスが変わって、今度は担任じゃなく習字の先生がいて。
3、4年生のときに1人おじいさん……おじさん?の習字の先生がいたんですよ。
その人が、また「なんでおまえら学校に来てるか分かるか」みたいなことを言って……

中原: 言われた、また?

岩崎: はい、でももうクラス替えしてるんですよ。
前の「友達をつくるために来てる」って聞いてるクラスから来てるのも何人かいるけど、周りはその答えを知らない人が多い。
「俺、答え知ってる」っていう感じで。
で、みんなはまた例のごとく「怒られるから」とか「勉強」とか。
先生はまた「違う」みたいなこと言って。

で、俺が満を持して「友達をつくるためです」って言ったら、
「違うよ。比べるためだよ」って言われて

中原・槙尾・矢島: (笑)

野村: うわぁ!

槙尾: 「比べる」ってどうなの?
一番駄目なんじゃないの?? そういう時代だったのかな。

矢島: すっげーな、それ。

野村: 最低だな、それ(笑)

 岩崎: そう言われて。
なんか、「友達つくるため」って言った俺の答えと本当に真逆のことだったから、本当に恥ずかしい気持ちになったし。
そのときに僕は、「1人の先生に何か期待するのは無理だな」と思ったんですよ。

中原: なるほどね。言うこと違うしね。

岩崎: 逆に「友達つくるため」って言ってた先生も、「問題あり」だぞって思って。
1人の先生に何か期待するっていうよりも、いろんな色の先生がいるから、1人きりを信じるのはむしろ危険だっていうことに気づいたんです。

中原: 先生って言われる人でも、いろんな人と会って自分の「物差し」みたいなものを作ったほうがいいっていうことかな?

岩崎: はい。
怒りやすい人には怒りやすい人の正義があるだろうし。
人当たりいい人は、実はこびてるんじゃないかとか。
今となってはすごくいい経験なんですけど、たまにあのときの(習字の先生との)情景がフラッシュバックして、ちょっと熱くなりますね。
「嫌だったな、あのとき」っていうか。

中原: ずっと残ってるのね。

岩崎: はい、ずっと残ってます。

槙尾: ひどいね。

中原: 結構、殺傷能力高い一言ですね。

岩崎: 本当にびっくりしましたよ。震えましたもん。

中原・槙尾・矢島・野村: (笑)

中原: 槙尾さんは、どうですか?

槙尾: 僕は高校3年生のときの担任の先生をすごい覚えてます。
国語の先生だったんですけど、授業っていうよりは毎回いろんな話をしてくれるんですよ。
「もう高校3年生になると国語ってそんなに教えることはないんだ」「教科書も関係ないし」みたいな感じで、毎回いろんな話をしてくれてて。
そのときにすごい覚えてるのは、「おまえら、命よりも大切なものってあると思うか?」みたいな話で。
さっきの(岩崎さんの)話じゃないすけど、「えー?」みたいな。
「命、一番大切なんじゃない?」とか、「お金?」とか何とか言ってて。

その先生は「違うんだよ」って。
「命より大切なものというのはあって、それは何かっていうと、〈人とのつながり〉なんだ」って。

要は、自分の命がなくなってこの世にいなくなっても、生きてる間に友達だったり家族だったりとか、そういうつながりがあって。
自分が思ってることとかをいろいろ伝えれば、自分がいなくなっても残りの人たちがそれを伝えてくれる、と。
その人たちのつながりで、命がなくなっても自分はずっと生き続けるから、一番大切なのは人とのつながりだよっていうのを言ってくれて、「すごくいい先生だな」って思ってたんですけど……
…実はその何カ月か後に、亡くなったんです。

それもすごいショックで。すごい大好きな先生で……

岩崎: え、なんでそんな怖い話みたいになってんの?!

矢島・野村: (笑)

岩崎: そんなボリューム下げなくていいよ!

矢島: ちょっと効果音で「世にも奇妙な物語」出してもらっていいですか(笑)

岩崎: 普通に「その何カ月後かに亡くなっちゃったんですよ」っていうふうに言えばいいのに、「亡くなっちゃったんですよ……」って。
なんでそんな怖いトーンで言うの?!

中原・矢島・野村: (笑)

槙尾: だって、元気だったのに……

岩崎 怖い話なの? 今のは。違うよね?!

中原・矢島・野村: (笑)

野村: 続き、ありますよね?

槙尾: 続きっていうか、だから。

岩崎: 現象としては亡くなってるけど、それはちょっとステレオタイプになり過ぎですよね?中原先生。

中原: (笑)

槙尾: 確かにこの先生、すごい大好きで。
亡くなられたんですけど、この先生の言葉とか授業とか、お世話になった期間は短かったんですけど。
多分、1学期か2学期くらいの間なんですけど。いただいた言葉はすごい自分の中で生きてて。

岩崎: 話が全然入ってこないわ!さっきのせいで。

矢島: じゃあ、その先生は槙尾さんの中で一緒に生きてるってことですか?

槙尾: それもそうだし、僕もその言葉をいろんな人に教えるときは話したりするようにしてて。

矢島: おお。

岩崎: みんな、「こわっ……」っていうの?

中原・槙尾・矢島・野村: (笑)

槙尾: そういう話じゃない(笑)
言葉だけをね。「人とのつながり」が大事だよっていうのを。
僕もいいタイミングでパタっていったら「こわーっ!」てなったかもしれないんですけど(笑)

野村: いや、いかなくていいいいいいいい。

だけど槙尾さん、僕らが槙尾さんに一番近い後輩だと思うんですけど、感じます。
そのことはものすごく。振る舞いとかの中に。

岩崎: つながりを大事にしてる?

野村: はい。すごい上なのに、終わった後「ありがとう」ってその場にいる全員に言ってくれて。
僕の知らない後輩にも言ってるんですよ。
それってすごいなって、僕は思ってました。

槙尾: それは、その先生じゃないかもしれないんですけど、「後輩には逆に先輩だと思って接しろ」みたいなのを聞いたことがあって。

矢島: すげえ。いい言葉。

槙尾: そういう、いろんないい言葉を聞くのが好きなんですよね。
それだけではなかなか徹底できないときもありますけど、なるべくそういうふうに接しようって思います。
そう思ってもらえてるなら嬉しいです。

中原: (笑)矢島さんは?

矢島: 僕は高校のときに、中学のときですかね。
お笑いをまだやりたいかやりたくないか決まってなくって。高1からお笑いを始める前の時期。
お笑いが大好きな先生がいて。
僕、大学のお笑いの先輩がエレキコミックさんなんですけど、その先生はエレキコミックさんの単独ライブとかを内緒で手伝ったりしてたんですよ。
お金もらうと駄目なので、学校の先生って。
そういうのを手伝ったりされてたその先生に「これからどうするんだ? 君たち。お笑いをやるのか?」って言われて。
「お笑いやるかやらないか、ちょっと迷ってます」って言ったら、「じゃあ、大学に行こう」って。

中高大の一貫校だったんで、そこのお笑いサークル行こうって言って連れて行ってくれたんです。
車で連れて行ってくれて、「君たちはこのお笑いサークルで入るかもしれないから、見ておきなさい」って言われて。

そのとき、ライブをやってたんですよ。
で、そのライブを先生が見させてくれて、「夢を追うか追わないかはわからないけれど、いろんなものを見ておきなさい」って。
それがきっかけで、高校からお笑い始めるんですけど。
すごくいい方でした。

中原: かなり先の姿まで見せてくれたんですね。

矢島: そうですね。
やっぱりその先生も、ちょっと「ちょけてる」というか「ふざけてる」方だったんで、男人気がとにかく高くて。
だから、男女別でホームルームとかやるときあるじゃないですか?
それで男だけが残ったら「男だらけのホームルーーーーム!」って言ったりとかして、男ノリが出る。
下ネタもありつつ、みたいな。
そういうのができる人でした。印象に残ってますね。

中原・岩崎・槙尾・野村: ………。

中原: (笑)

矢島: ……え、何ですか?

槙尾: トーンが……(笑)

矢島: えっと、その方は数カ月後に亡くなった方がよかったですか?

野村: いやいやいや(笑)

中原・岩崎・槙尾: (笑)

矢島: それなら、そういう話にしてもらって……

岩崎: それは怖いです(笑)

中原・槙尾・野村: (笑)

 

 

>>Part4は来週公開予定!

  • 取材

    中原 淳

  • 撮影

    松尾 駿

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