第23回
2019.08.21
京都市立西京高校の「特色」を支える戦略(後編)
「特色ある学校づくり」は、今日の学校教育について考えていくときの重要な課題の一つになっています。とはいうものの、実際の「特色ある学校」とは、どのようなものなのでしょう?また、学校における特色づくりは、教師のどのような活動によって可能になっているのでしょう?
「特色づくり」特集第2弾となる今回は、京都市立西京高等学校エンタープライジング科をご紹介します。マナビラボ・プロジェクトでは、2018年7月と10月の2度にわたって同校におじゃまし、エンタープライズ教育の立ち上げから今日までの歩みについて伺ってきました。エンタープライジングという特色を打ち出していくことと教員組織の特質はどうつながっているのでしょう。
前編・中編・後編の3回に分け、同校についてご紹介させていただきます!
前編はこちら!
中編はこちら!
「特色」とは何か
――「育てる」という観点からすると、先生方はどんなことを意識されていますか?
竹田先生:堀川や西京で改革に携わった時は、もうがんがん言ってブルドーザーみたいにやってましたね。「何やねん!」って。
でも、今の校長の立場ではそうはしてない。今のところ、ブルドーザーはやってないと思います。だからどっちかって言うと、彼(岩佐先生)が自由奔放に動けるようにしている。
彼(岩佐先生)ももう管理職になったから、人によっては、ざっくばらんに言われて、傷付く場合もあるわけ。そういう時は「いや、(岩佐先生は)そういう意味で言うてんのんとちゃうから」っていうようなマネジメントもせなあかん。せやから言うても、そのやり方って萎縮させるし、難しいので、今は、学校のみんなに「愚痴があったら来てください」って言ってる。僕のタイプじゃないねんけどね。
外部に対してはきゃんきゃん物申していくけど、内部にはそうはしてない。ただ、教職員にはいろんな場面で「今、これでこう戦ってんねん。もうこれ腹立ってしゃあないねん」って漏らすようなことはあるけどね。
校長という立場で絶対不変なのは、僕が選り好みしたらあかん、ということ。それこそ、教職員の中にしんどい人がいないか見渡して、そういう人にこそ積極的に接せなあかん、優しくしなあかんって常に心掛けてる。そうでないと、やっぱり組織としては苦しい。
岩佐先生:僕は去年から教頭してますけど、よく若手に「僕は職員室の担任ですから」って言うんです。教職員もいろんな人がいっぱいいて、まさに学級行って担任してるのと変わらないって思います。子どもと一緒ですよ。ただ、大人は子どもほど純粋じゃないので簡単にはいかない部分っていうのはありますよね。
「職員室の担任」として、ちょっと偉そうなあれなんやけど、先生方に「あなたのしたいこと何ですか?」って聞くんです。たまにわあわあ文句ばっかり言ってる人もいるけれど、「何がしたいんや?」って。その人のしたいことがわかれば、それがやれるような応援もできると思うんです。だからまずは、他人事じゃなくって、当事者意識っていうか「自分がここでどういう教育したいんですか」ってことなんです。
でも「職員室の担任」というのを30代の頃から思ってたわけじゃないです。50代になって管理職になってから、自分が前線に出ることも少なくなってきた頃に先輩から言われたことがあるんです。「岩佐くん、もう枯れないと駄目ですよ。枯れていきなさい」って。それはそうですよね。プレゼン一つにしたって若い先生方にやってもらわないと、いつまでも僕ができるわけでないので。そういう人材育成っていうのは、すごく気にはしています。
あとは、校長が明るい方なので、職員室もみんな明るいですよ。(竹田先生の方を見て)いや、元気な管理職でしょう。それはありがたいことです。他の学校では、校長と教頭が本当しゃべらないんです。しゃべってるのかもしれませんけど、うちは校長の横で教頭がこんなんです。
竹田先生:今日はおとなしいほうです、これ。
(竹田先生退席後)
岩佐先生:やっぱり校長がいつも笑ってるのは大事なことじゃないですか。ずっと難しい顔している校長を誰が救いますかってことです。うちの校長はいつも教頭席のところにワッサーって来て、ざっくばらんに話していくんです。それを職員室のみんなが見ていて「あの人たち何かワーワー言ってるね、いっつも」みたいに思ってるんだと思います。
だから、トップやリーダーの資質の一つかもわからないけど、何か難しいことを考えてて、壁にぶち当たってる時でも、管理職である僕たちが不安がらないこと、それは気を付けてますね。そうじゃないと下は付いて来ないじゃないですか。
――エンタープライジング科開設以来、息の長い教育改革を戦略的に展開されてきたのですね。このことは、まさに西京高校の「特色」の一つと言えるのではないですか?
岩佐先生:新陳代謝は大事ですよ。でも、それが一つのある種、特色ある学校づくりのポイントっていうふうに考えたことはないですね。それが特色とは思わなかったです。「何ができるのか」っていうことが特色かな、とは思ってましたけど。自分らがどうこうってのはあまり考えたことがなかったです。
実際、50を超えてくると、もう世代交代したほうがいいのかもしれませんし、若い人がやったほうがいいかもわかんない。
でもね、今、この西京でやってることが面白くなってきたとこですから。まだまだ飽きないですね。
本日は、ありがとうございました!
*なお、西京高校エンタープライジング科については『「未来を語る高校」が生き残る:アクティブラーニング・ブームのその先へ』(学事出版、2019年5月発売)の中でも詳細に紹介しています。こちらも合わせてご覧いただけますと幸いです。
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取材
田中 智輝
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取材
村松 灯
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取材
町支 大祐
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取材
渡邉 優子
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撮影
村松 灯