マナビラボ

第12回

2016.04.27

一歩踏み出すための学び
−今が将来につながるために− 【後編】

社会に貢献する活動を通じた学習活動、サービス・ラーニングを、一年を通じて総合的な学習の時間の中でキャリア教育に活かしている立命館宇治高等学校の酒井淳平先生。キャリア・サービス・ラーニング(CSL)にかける思いを伺った。

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−−CSLに取り組むにあたっての目的はなんでしょうか。

酒井淳平先生:CSLの目的は、大きく分けて①人と関わる力、②社会に関わることを通して普段気付きにくい自分の考えや長所に気づくこと、③自分の将来や学ぶ意味・働く意味について考えること、の3つです。①はアサーションなどのスキルを身につけること、②は生徒が自分で探して自分で申し込むボランティア活動に参加する中で自分について意識化すること、③は働くこと、学ぶことについて自分のビジョンを持つことが重要であると考えています。

−−CSLをはじめたきっかけはなんだったのでしょうか。

酒井先生:キャリア教育の実践を進める中で、単発のイベントではなく、系統的な指導こそが重要と感じていました。また高校1年生にはキャリア教育の時間が十分に確保できないという問題がありました。そういう背景があり、カリキュラム改革のときに、高校1年生にキャリア教育の授業を置くということを提案し、今に至っています。CSLで今の学びと生徒自身の将来とをつなぎたい。生徒の中でこれが卒業後にでもつながるようになればいいと思っています。

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−−生徒の方々には将来どのようになっていてほしいとお考えですか。

酒井先生:今いるその場で求められる人になってほしいですね。いる場をプラスにできるような、一隅を照らす人になってほしいです。そのためにも、常に挑戦していってほしい。前向きに生きていってもらいたいと思います。

−−CSLをやってみての手応えはいかがですか

酒井先生:授業のたたき台は私がメインで作ることが多いですが、他のCSLを担当する先生と一緒に手直しをしたりしています。授業を担当できる人を広げていくようにという思いもあり、担当者全員が指導案と資料を用いて毎回打ち合わせをし、テーマを共有するようにしています。目標の共有が大切です。
授業では、ワークが増えると考えも深まるのでもっとワークの分量を増やしたほうがよかったかな、でも分量はあれが限界かな……とか、今でも迷うことはあります。生徒からのフィードバックを元に考えないと、など考えています。
あとは他の先生のCSLの授業を見ていて、改めて「教師自身の教材への思いや理解で授業が変化する」ということを感じました。同じ指導案で授業をしても、やはりその先生の思いがあるところは、自然と強調され、授業は違うものになります。指導案や資料だけで授業ができるわけではないですから。このあたりは、複数の教師でCSLを継続していくときには課題になるのかなとも思います。

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−−CSLを実施するにあたって苦労されたことはありますか。

酒井先生:一から作ってきたので、手探り状態だったというのはあります。苦労の連続でした。ただ、授業は生徒あってのもの。苦労はしたほうがいいなと思うこともあります。苦労はいっぱいありましたが、初期から一緒に授業を作ってきた田内先生の存在は大きかったです。管理職の先生も、たとえば八木教頭先生が年間予定の調整や事務室との連携のフォローなど動いてくださり、大きな支えになりました。同僚の先生方もいつも協力してくれました。いろいろなメディアに取り上げてもらったこと、学校をこえていろんな方が実践を応援してくれたことも励みになりました。あれこれ悩んだり考えたりしたときに同僚や先輩、個人的な友達など、多くの方と話ができ、授業作りも違う教科の先生との共同作業でしたし、CSLのおかげで教師である私自身が成長した、という実感はあります。

−−今回の授業はいかがでしたか。

酒井先生:10分のグループワークの際、各グループにもう少し介入できたかな、という思いはあります。今までの4時間の授業を思った以上に思い出してくれたのはよかったのですが、介入していればもっと深まったかもしれないですね。CSLの時間だけ担当しているクラスなので、私がクラスのことをよくわかっていないということは事実です。クラス担任とCSLの担当教師がティームティーチングなどで連携ができていけば、より多くの教師が関われ、各教師がクラス理解をより深めていくことができるだろうという手応えはあります。

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−−数学でもアクティブラーニングの視点に立った参加型授業を行っていますが。

酒井先生:アクティブラーニングではなく、ラーニングが気になります。生徒がどう学んでいるのか。授業中には、グループワークだけど個人に注目して、誰がどのくらい理解しているのかを見ています。グループにしてかえって個人に目が行き届くようになりました。例えば余分な話が増えたと感じたときにはグループを解いたり、臨機応変に対応しています。グループワークを取り入れる前に比べて授業中に扱う問題数はむしろ増えたので、進度は早くなりました。平均点も向上したように思います。授業はまだまだ未完成なので、教材としていいものがあれば、積極的に取り入れていきたい。学んだことをつなげてより深く理解するという点ではコンセプトマップも数学の中でできればいいと思います。

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−−授業全体を通して気をつけていることはなんでしょうか

酒井先生:今やっていることと将来のつながりを意識的に話したり、個別の生徒の興味がわかると意図的に話題提供したりもしています。授業づくりでは、最低ラインと最高ラインを目標として設定しています。グループワークを取り入れる授業でも、取り入れない授業でも、50分後の生徒たちの姿を明確にイメージして自分で言葉にしてアウトプットしておく必要を改めて感じています。その時間の目標だけでなく、数学を学ぶ目的も明確にして生徒に伝えること。目的がぼんやり、漠然としているとぶれやすいので、明確に何回も伝えることが大切だと思っています。

 

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立命館宇治高等学校は、宇治市に所在する私立の高等学校である。立命館の建学の精神と教学理念に基づいて、世界と日本の平和的発展に貢献するために未来のグローバルリーダーを育成することを教育目標としている。

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